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Channel: 風色明媚
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2014年 2月7日 金曜日

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イタリアのトゥスカーニアという街をご存知ですか?

トスカーナ Toscana ではありませんぞ、トゥスカーニア Tuscania です。
よく似た言葉ですのでトスカーナ州に関係あるのか?と思ってしまいますが、トスカーナ州ではなく、その南のラツィオ州にあります。
首都ローマのあるラツィオ州の北部、古都ヴィテルボから真西に30キロほどのところにあります。
この一帯は古代ローマ以前からエトルスク文化が花開いた場所で、有名なタルクゥイニアも50キロほど離れたところにあります。


今年の第1作として、このトゥスカーニアにある教会を描いています。
この街の郊外に二つのロマネスク教会が建っています。
サン・ピエトロ聖堂と、サンタ・マリーア・マッジョーレ聖堂です。
そのサン・ピエトロ聖堂の正面壁を描いているのです。

トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂と言われても姿を思い浮かべることのできる人は少ないと思います。
私もこの街のこと、この聖堂のことを知ったのは、ほんの数年前のことでした。
映画ファンなら、特に撮影地に関心をお持ちの方なら、あるいはピンと来る方がいらっしゃるかもしれません。
この聖堂は、今までに幾つかの映画に登場したことがあるのです。
一例を挙げますと、アンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』の冒頭で
主人公のロシア人作家ゴルチャコフの通訳である女性エウジェニアが
深い霧の夜、とある礼拝堂の祭壇に描かれた絵を見に行くシーンがあります。
柱の林立する礼拝堂では、地元の女性達が儀式を執り行っています。
たくさんのロウソクの灯りの向こうにぼんやりと浮かび上がっている祭壇の絵は
ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画「マドンナ・デル・パルト(懐妊の聖母)」でした。
この礼拝堂シーンの撮影は、サン・ピエトロ聖堂にある地下礼拝堂(クリュプタ)で行われたのです。
しかし「マドンナ・デル・パルト」は実際にはここにはなく、あくまで映画の中の設定です。


最近の傾向として、私は一度も実物を目にしたことのないものを描くことが多くなりました。
トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂も一度も行ったことがないどころか、聞いたことさえありませんでした。
一昨年、イタリア在住の友人shinkaiさんがトゥスカーニアに行かれ、ブログで紹介されたのを見て初めて知ったのです。

ブログに掲載されたサン・ピエトロ聖堂の正面壁を一目見て、あ!っと息を呑みました。
何に息を呑んだのか、とりあえずshinkaiさんの記事をご覧いただきたいと思います。

「古寺巡礼 サン・ピエトロ聖堂 ・ トゥスカーニア n.2」
http://italiashio.exblog.jp/16812882/


正面壁の白い大理石部分は、見事なロマネスク様式の彫刻が施されています。
彫刻で彩られた聖堂はあまたありますが、多くはゴシック期以降のもの。
ロマネスク期では一部だけに彫刻が配置されたものがほとんどのようです。
ロマネスクの彫刻で彩られた正面壁のある聖堂と言えば、ウンブリア州スポレート郊外のサン・ピエトロ聖堂も有名です。
こちらもshinkaiさんのブログで紹介されています。

「n.2 古寺巡礼  サン・ピエトロ教会  スポレート」
http://italiashio.exblog.jp/16476739/



さて、この正面壁を描くのはいいのですが…かなり面倒です。
いつも以上に手間暇がかかるのは最初から目に見えています。
描くのが面倒なのは彫刻だけではありません。
最大の難関は薔薇窓です。
しかも真っ正面から描くのならいざ知らず、下から見上げた構図で描いているのです。
見上げていますから薔薇窓は楕円形に見えているのです。
斜めから見た薔薇窓を描くなんて正気の沙汰ではない!と思いつつも
描きたいのであれば、ひたすら描くしかない!と自分に言聞かせながら描いています。

案の定、描き始めから修正に次ぐ修正の日々を送っています。
基本的に左右・上下対称の幾何形体ですので、あちらを立てればこちらが立たず…というシーソーゲームの連続です。
私は人並みの集中力は持っているつもりですが、反復する幾何形体は大の苦手なのです。
同じ形が繰り返しているものは、2・3個描くと集中力が途切れて「面倒臭い!飽きた!」と文句を言う悪い癖があるのです。
できることなら誰かに手伝ってほしいものですぅ〜!
アシスタントのアルバイトしませんかぁ?




50号P(横116.7cm 、縦 80.3cm)の大きさで描いていますが、縦は75cmにトリミングする予定です。
画像の上部に薄らと横線が見えると思いますが、ここが下から75cmの位置です。




トリミングする範囲をグレーにしてみました。
最上部の三角形の壁には石積み以外、窓も彫刻も何もないので
少しトリミングしないと、最上部が退屈な印象を与える可能性があります。
しかし、石積みを描けば印象が変わりますので、一応このまま描き進めて行き
様子を見ながら最終的なトリミング位置を決めるつもりでいます。

この画像、全体が若干右下がりに感じますね。
実物では特に問題はありませんので、撮影後、長方形に補正する際にミスったのかもしれません。
それから、左右の側廊の屋根の傾斜が強過ぎますね。
特に右の傾斜が強く、これも右下がりに感じる要因の一つかもしれません。


私は今まで、作品の90%くらいは福井製の雲肌麻紙を使ってきましたが
今回は初めて高知製の「土佐麻紙」という紙を使用しています。
しかも表を使わず「裏使い」をしています。
土佐麻紙の厚口は、一般の越前麻紙に比べると1.5倍ほどの厚みがあり
裏面は、初めて目にするとビックリするほど凸凹しています。
まるで水彩用紙のようです。
この凸凹が、私のイメージするマチエールを作るために役立ちそうだと使用に踏み切りました。
しかし何ぶん初めてのことですので、イメージ通り行くかどうか描いてみないと分かりません。


この下描きは、まだ終わったわけではありません。
この程度描いておけば彩色に移れないことはないのですが、今回はできるだけ鉛筆で描き込むつもりです。
まだしばらく時間がかかりそうです。

-------------- Ichiro Futatsugi.■

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