今、私は珍しく下図を描いています。
普段は下図なしで、本紙にいきなり鉛筆を使って下描きを始めるのですが
さすがに今回はそうもいかず、久しぶりに下図を描くことにしました。
それは、実在しない架空の街を創作して50号で描こうとしているからなのです。
私は基本的に実在の風景や建造物を描いてきました。
もちろん絵ですから多少の脚色はありますが、自分の目で見てきた実景をベースとしたものでした。
今回描こうとしているのは、岩の台地の上に造られた”岩上の街”。
浸食作用などによって周囲が削り取られて残った台地の上に築かれた街です。
発想の原点となったのは、イタリア・ラツィオ州にあるチヴィタ・ディ・バーニョレージョという小さな岩上の街。
首都ローマのあるラツィオ州の最北部、ウンブリア州やトスカーナ州との州境に近い田舎街(と言うより村)です。
このチヴィタの近隣には岩上の街がいくつか存在しています。
最も有名なものは、イタリアでも有数の規模を誇るウンブリア州のオルヴィエートでしょう。
チヴィタは、そのまま描いてしまいたいほど美しい街なのですが
私のイメージしているものよりずっと小さいのです。
と言って、オルヴィエートでは巨大過ぎます。
ならば自分で創るしかない…。
私が実際に目にしたことのある岩上の街はオルヴィエートだけです。
しかも街の中ばかり取材していて、外観となると資料は皆無に近い有様。
小高い丘や山の尾根に造られた一般の丘陵都市を元にして創作することも可能ですが
やはり実際に見てきたような気分になって描くためにはモデル(写真)が是非とも欲しいところです。
そこで頭に浮かんだのは…
リンクさせていただいているブログ”イタリア・絵に描ける珠玉の町・村 ・ そしてもろもろ!”です。
作者でイタリア在住のshinkaiさんは抜群の行動力でイタリア各地(だけではありませんが)を取材し
それを2〜3日おきのハイペースで、写真を主体とした記事にしていらっしゃいます。
写真の腕前も並々ならぬものをお持ちで、いつも私は食い入るように眺めているのです。
shinkaiさんは昨年イタリア中部を旅されていて
チヴィタや近隣の街ピティリアーノ(トスカーナ州)などの岩上の街の記事を書いていらっしゃいます。
実を言えば、私が岩上の街を描こうと思い立ったきっかけは、その記事なのです。
で、そこに掲載されている写真を参考にさせていただこうと…。
ブログの写真を参考にさせていただきますとshinkaiさんにお話したところ
思いがけず、しかも間髪を入れずにドドドーっと多数の写真が送られてきました。
ブログに掲載されたもの、されなかったものも含めて、いずれもブログよりずっと大きいサイズばかりで
中には幅4000ピクセルを超えるものもあり、細部まで良く見えて、その場にいるかのような錯覚を起こすほどです。
ああ、ありがたや!ありがたや!
神様!仏様!shinkai様!
感謝!感激!雨・霰!
これからはイタリアに足を向けて寝れませんね。
チヴィタと近隣の街ピティリアーノなどについては、是非shinkaiさんのブログをご覧ください。
チヴィタ・ディ・バーニョレージョ・天空の町1
http://italiashio.exblog.jp/12660510
チヴィタ・ディ・バーニョレージョ・天空の町2
http://italiashio.exblog.jp/12660357
イタリア中部紀行 2010年秋 その5
http://italiashio.exblog.jp/12045646
さて、今回から久しぶりに制作過程を掲載することにしました。
今描いている下図は10号ほどの大きさです。
原寸大の下図は作りません。
![]()
街並みを一通り描いた2〜3日前の状態です。
横構図で描いていますが、まだ横にするのか縦にするのかも決めていません。
私のイメージは、あくまでイタリア中部の田舎によくある素朴な街並みです。
あまり凝った建物は入れません。
台地の上ですから、街並みはほぼ水平です。
そこにニョッキリと、ロマネスク様式の質素な鐘楼が立っているという想定です。
この街並みは、まだ最終案ではありません。
一応基本形ができたかな…というところです。
50号に引き伸ばせば、それだけで印象が変わりますので
今後、適宜修正を加えて行きます。
下の岩盤をあまり描いていませんが、この高さをどの程度にするかで迷いが出て一時停止したのです。
思い切ってもっと高くして縦構図にするのも面白いかもしれません。
逆に半分くらいの高さにして空を広くとるという手もあります…。
でも、まあ、悩む前にこのまま岩盤まで描くことにしました。
手を動かしながら考えないと、絵は先には進みませんので。
![]()
岩盤ができてきました。
この岩盤は、内陸部の岩上の街ばかりではなく、海辺の岩場も参考にしています。
ナポリの南にあるソレントの岩場やカプリ島など、昔取材したスケッチや写真を引っ張り出しました。
shinkaiさんのブログにも岩場の写真がいくつかありましたし…。
しかし、構図はまだ迷っています。
こういう構図が当初からの予定なのですが…。
さて、この下図はここで終わりにします。
まだ描き足りないところがあるのですが、これ以上緻密に描いてしまうと
50号に引き伸ばす際に、下図を模写すればいいやという気持ちが起こってしまうのです。
それは、あまり良いことではありません。
この下図をベースにすることはもちろんなのですが
もう一度再検討しながら新たにデッサンをやり直すくらいの気概が必要だと思います。
そうしないと生気のない作品になってしまうような気がするのです。
そのためにも、私は原寸大の下図は作らないのです。
今後は、この下図を下敷きにして、もっと小さいサイズの下図で構図を決めます。
それが終われば、いよいよ50号の本紙に描き始めることになります。
それでは、また次回に。
-------------- Ichiro Futatsugi.■
普段は下図なしで、本紙にいきなり鉛筆を使って下描きを始めるのですが
さすがに今回はそうもいかず、久しぶりに下図を描くことにしました。
それは、実在しない架空の街を創作して50号で描こうとしているからなのです。
私は基本的に実在の風景や建造物を描いてきました。
もちろん絵ですから多少の脚色はありますが、自分の目で見てきた実景をベースとしたものでした。
今回描こうとしているのは、岩の台地の上に造られた”岩上の街”。
浸食作用などによって周囲が削り取られて残った台地の上に築かれた街です。
発想の原点となったのは、イタリア・ラツィオ州にあるチヴィタ・ディ・バーニョレージョという小さな岩上の街。
首都ローマのあるラツィオ州の最北部、ウンブリア州やトスカーナ州との州境に近い田舎街(と言うより村)です。
このチヴィタの近隣には岩上の街がいくつか存在しています。
最も有名なものは、イタリアでも有数の規模を誇るウンブリア州のオルヴィエートでしょう。
チヴィタは、そのまま描いてしまいたいほど美しい街なのですが
私のイメージしているものよりずっと小さいのです。
と言って、オルヴィエートでは巨大過ぎます。
ならば自分で創るしかない…。
私が実際に目にしたことのある岩上の街はオルヴィエートだけです。
しかも街の中ばかり取材していて、外観となると資料は皆無に近い有様。
小高い丘や山の尾根に造られた一般の丘陵都市を元にして創作することも可能ですが
やはり実際に見てきたような気分になって描くためにはモデル(写真)が是非とも欲しいところです。
そこで頭に浮かんだのは…
リンクさせていただいているブログ”イタリア・絵に描ける珠玉の町・村 ・ そしてもろもろ!”です。
作者でイタリア在住のshinkaiさんは抜群の行動力でイタリア各地(だけではありませんが)を取材し
それを2〜3日おきのハイペースで、写真を主体とした記事にしていらっしゃいます。
写真の腕前も並々ならぬものをお持ちで、いつも私は食い入るように眺めているのです。
shinkaiさんは昨年イタリア中部を旅されていて
チヴィタや近隣の街ピティリアーノ(トスカーナ州)などの岩上の街の記事を書いていらっしゃいます。
実を言えば、私が岩上の街を描こうと思い立ったきっかけは、その記事なのです。
で、そこに掲載されている写真を参考にさせていただこうと…。
ブログの写真を参考にさせていただきますとshinkaiさんにお話したところ
思いがけず、しかも間髪を入れずにドドドーっと多数の写真が送られてきました。
ブログに掲載されたもの、されなかったものも含めて、いずれもブログよりずっと大きいサイズばかりで
中には幅4000ピクセルを超えるものもあり、細部まで良く見えて、その場にいるかのような錯覚を起こすほどです。
ああ、ありがたや!ありがたや!
神様!仏様!shinkai様!
感謝!感激!雨・霰!
これからはイタリアに足を向けて寝れませんね。
チヴィタと近隣の街ピティリアーノなどについては、是非shinkaiさんのブログをご覧ください。
チヴィタ・ディ・バーニョレージョ・天空の町1
http://italiashio.exblog.jp/12660510
チヴィタ・ディ・バーニョレージョ・天空の町2
http://italiashio.exblog.jp/12660357
イタリア中部紀行 2010年秋 その5
http://italiashio.exblog.jp/12045646
さて、今回から久しぶりに制作過程を掲載することにしました。
今描いている下図は10号ほどの大きさです。
原寸大の下図は作りません。

街並みを一通り描いた2〜3日前の状態です。
横構図で描いていますが、まだ横にするのか縦にするのかも決めていません。
私のイメージは、あくまでイタリア中部の田舎によくある素朴な街並みです。
あまり凝った建物は入れません。
台地の上ですから、街並みはほぼ水平です。
そこにニョッキリと、ロマネスク様式の質素な鐘楼が立っているという想定です。
この街並みは、まだ最終案ではありません。
一応基本形ができたかな…というところです。
50号に引き伸ばせば、それだけで印象が変わりますので
今後、適宜修正を加えて行きます。
下の岩盤をあまり描いていませんが、この高さをどの程度にするかで迷いが出て一時停止したのです。
思い切ってもっと高くして縦構図にするのも面白いかもしれません。
逆に半分くらいの高さにして空を広くとるという手もあります…。
でも、まあ、悩む前にこのまま岩盤まで描くことにしました。
手を動かしながら考えないと、絵は先には進みませんので。

岩盤ができてきました。
この岩盤は、内陸部の岩上の街ばかりではなく、海辺の岩場も参考にしています。
ナポリの南にあるソレントの岩場やカプリ島など、昔取材したスケッチや写真を引っ張り出しました。
shinkaiさんのブログにも岩場の写真がいくつかありましたし…。
しかし、構図はまだ迷っています。
こういう構図が当初からの予定なのですが…。
さて、この下図はここで終わりにします。
まだ描き足りないところがあるのですが、これ以上緻密に描いてしまうと
50号に引き伸ばす際に、下図を模写すればいいやという気持ちが起こってしまうのです。
それは、あまり良いことではありません。
この下図をベースにすることはもちろんなのですが
もう一度再検討しながら新たにデッサンをやり直すくらいの気概が必要だと思います。
そうしないと生気のない作品になってしまうような気がするのです。
そのためにも、私は原寸大の下図は作らないのです。
今後は、この下図を下敷きにして、もっと小さいサイズの下図で構図を決めます。
それが終われば、いよいよ50号の本紙に描き始めることになります。
それでは、また次回に。
-------------- Ichiro Futatsugi.■