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2014年 8月29日 金曜日

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8月も残り僅かとなり、暦の上ではすでに秋に入っていますが

「秋は名のみの、風の熱さよ」

そういう地域もまだ多いのではないかと思われます。
時期外れの挨拶ではありますが、残暑お見舞い申し上げます。


さて、前回はイタリアの教会を描きましたので、次は日本のものをと考えていました。
1年半前から構想を練り続けている「滝」を50号で描こう…と予定していたのでしたが
滝より先に描きたいものが見つかりましたので、急遽予定を変更することにしました。



■ ロマネスク聖堂の後陣 40号 (第1回)

前回はイタリア・トゥスカーニアにあるロマネスク様式の教会サン・ピエトロ聖堂の正面壁を描きました。
正面壁の上半分だけをドーンと画面いっぱいに。
薔薇窓や彫刻など若干の凸凹はあるものの、基本的には平面です。
もちろん、正面しか見えていなくても聖堂の奥行きを感じさせることは必要で、それには充分留意していましたが
仕上がりが近づくにつれ、今度は見るからにボリューム感のある建物を描いてみたいと思うようになってきました。

で、選んだものがロマネスク聖堂の「後陣」です。
それを画面いっぱいにドーンと描いてみようと思います。

改めて説明するまでもありませんが、後陣とは聖堂の最奥にある祭壇を取り囲む空間のことです。
それが外部に張り出しているように見える部分のことで、アプシス、あるいはアプスと呼ばれます。
大抵が円柱を半分に切ったようなカマボコ型をしており、その上に緩い傾斜の半円錐形の屋根がつきます。
ロマネスクやビザンティンなどの聖堂では、左右に小型のものを追加し、3連、あるいは5連の後陣が多く見られます。
因に、前回描いたトゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂の後陣は1つだけです。



今回は特定の聖堂の後陣ではなく、実在するものをモデルにして3連の後陣を描きます。
主に参考にしたのはスペインの修道院とイタリアの教会で、どちらも3連の後陣を持っています。

スペイン・バルセロナの北西にある都市テラッサ Terrassa から更に北へ
マタデペラ Matadepera という街の近くの山中にポツリと建つサン・ロレンソ・デル・ムント修道院。

そして、イタリア・エミーリア=ロマーニャ州サン・レオ San Leo にあるサンタ・マリーア・アッスンタ教会。
サン・レオは、サン・マリーノ共和国から南西方向に、直線距離にして10キロほどのところにあります。

そのサン・レオのサンタ・マリーア・アッスンタの後陣を、先日、イタリア在住の友人shinkaiさんが描かれたばかりで
その制作過程がブログに掲載されています。
http://blog.goo.ne.jp/suisaishiho/c/a8a1cbb1c00a3d250a969d12f340365d

shinkaiさんは後陣の上半分を斜めから見上げた構図で、10号ほどの画面ですが
積み上げられた石一つ一つまで丁寧に執拗に描写し、迫力ある見事な作品に仕上げられています。


では、私の方はと言いますと…。




一応構図が決まった段階です。
画面の大きさは、横100cm、縦85cm。
ほとんど後陣だけを画面いっぱいに、ほぼ真っ正面から見上げています。
身廊や側廊の壁・空・地面が多少入っていますが、ほとんどが後陣のみです。
使っている画材は、鉛筆・薄墨・水彩です。

まだ石を描き始めたばかりですので、のっぺりしていて田舎でよく見かけるサイロのようです。
サイロってご存知ですか?
穀物や家畜の飼料などを貯蔵する円筒形の倉庫のことです。

右の後陣の傾斜角度が、左に比べてやや強いような印象を受けます。

石を描き込んでから聖堂全体の形・構図を大幅に修正するのは大変になりますので
今の段階で、だいたいの聖堂全体の形・構図を決めておく必要があります。
しかし、単純な形だけに誤摩化すことが難しくなりますので、意外と厄介なのです。

この構図は完全な左右対称ではなく、建物をやや右に寄せています。
こういう構図では建物を寄せずに画面中央に入れてしまう方がスッキリして良い場合が多いのですが
光の方向・明暗のバランスから、やや右に寄せてみました。
それを確認するために作ってみたのが次の画像です。





完成時の明暗の分布はこのような感じになります。
左側から光が当たっていますので、壁の明るい部分が左寄りになる上
画面右側は、背後の側廊の壁も左側より暗く落とす予定ですので
完全な左右対称の構図にすれば、右端の暗い部分が広過ぎるように感じると予想したのです。

次の画像は、右端を少し伸ばして左右対称の構図にしてみたものです。



微妙ですが、やはり右端の暗い部分が僅かに広過ぎるように感じます。
右側の後陣の陰や側廊の壁がもっと明るければ建物を真ん中に入れて問題はないと思いますが
やはり、こういう明暗の分布であれば右に寄せるのがベストだと思います。


この画像は明暗の分布を確認する目的で作ったもので、色は度外視しています。
前回は白黒のみで描きましたが、今回は色を使います。
石は赤茶や黄色を主体にしてやや派手目な色にし、空は若干青味が入った黒にする予定です。

とりあえず、右側後陣の傾きを修正すれば、大筋で構図はOKだと思いますので
その後はひたすら、黙々と石を描いていくことになります。

-------------- Ichiro Futatsugi.■

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