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Channel: 風色明媚
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2017年12月1日 金曜日

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◆ ヴェネツィアのカフェ 日本画 50号 第1回

イタリアが世界に誇る水の都ヴェネツィアの、サン・マルコ広場にある老舗カフェを描いています。
ヴェネツィアにあるカフェの中で最も名の知られた店の一つ「カッフェ・フロリアーン Caffe Florian 」がモデルです。

一般的には「フローリアン」という呼び方が浸透しており、私も長年「フローリアン」と発音してきましたが
ヴェネツィアを州都とするヴェネト州にお住いの友人の画家 shinkai さんによると
イタリア国営放送ヴェネツィア局のアナウンサーを始め、現地の人たちは「フロリアーン」と発音するのだそうです。
おそらく「フローリアン」の方は英語読みなのだろうと思います。
そこで私も、大好きなイタリアに敬意を表して「フロリアーン」と表記することにします。

カッフェ・フロリアーンは、ヴェネツィアの現存カフェの中では最古とのことで
1720年の創業と言いますから、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世によるイタリア統一(1861年)より前で
地中海貿易で栄華を極めたヴェネツィア共和国時代ということになります。

余談ですが、ヴェネツィア共和国という名称は、実は正式名称ではなく通称で
正式名は「最も高貴な共和国ヴェネツィア Serenissima Repubblica di Venezia 」と言うのだそうです。

カッフェ・フロリアーンの創業者は Floriano Francesconi フロリアーノ・フランチェスコーニという人物。
元々はアッラ・ヴェネツィア・トゥリオンファンテ Alla Venezia Trionfante という、ちょっと物々しい印象の店名だったそうですが
後に常連客によって 、創業者の名前を取り入れた Caffe Florian に改名されたのだそうです。


フロリアーンはサン・マルコ広場のどこにあるのか、Googleマップの航空写真を引用して位置を示します。



このくらい縮小すると名称の文字が読めなくなりますが、黄色のアンダーラインが見えますね?
そのラインの右端の黄色い丸がフロリアーンの位置です。

右端のコの字型をした白っぽい建造物がドゥカーレ宮 Plazzo Ducale で、その上がサン・マルコ聖堂 Basilica di San Marco 。
フロリアーンの入っている赤い屋根の細長い建物が新行政館 Procuratie Nuove 。
広場を挟んで向かい側にある細長い建物が旧行政館 Procuratie Vecchie 。

この旧行政館の中央あたりには、1775年創業のカッフェ・クアードゥリ Caffè Quadri があります。
新行政館の右端、建物が折れ曲がる角の脇にサン・マルコの鐘楼 Campanile di San Marco が建っています。


フロリアーンの入っている建物の1階は回廊になっていていますが、こんな感じです。



この写真は、今年の5月中旬に shinkai さんが撮影したものです。
しかし実を言うと、この写真はフロリアーンではなく、斜向かいにあるカッフェ・クアードゥリなのです。
なぜクアードゥリの方を載せたかと言うと…



同じ時、フロリアーンはこんな状態だったのです。
全面的に覆いがかけられており、思わずマンマ・ミーアと叫びたくなりました。
おそらく壁面の洗浄作業だろうと思います。
クアードゥリの方も雨染みが目立っていますが、まだマシな方です。
フロリアーンの方は更にひどく、煤けたように真っ黒な壁でした。




さて、前置きが長くなりましたが、本題に入ります。



広場から回廊越しにカフェを眺めた構図で描いています。
画面サイズは50号F(116.7 x 91 cm)で、仕上がりは夜景になります。
鉛筆と黒い顔料を併用して、まずは形を描き進めています。
現在は、客やカメリエーレの配置を決めている最中です。

クアードゥリの写真でお分りのように、回廊のアーチには日除け用の白い幕が取り付けられており
左右に分割して取り付けられた幕の間には、大きな球形の電灯がぶら下がっています。
直射日光の強い日には柱の中央くらいまで幕が下げられるようになっていて
それ以外の日には、このように巻き上げられていますし
真冬の時期は取り外されることも多いようです。

実は、この作品を描こうと思い立ったきっかけは、この幕にあります。
もちろん、フロリアーンの店自体も面白い雰囲気を持っているのですが
幕があることにより開演した劇場の舞台のような趣が加わり、夜景ということで幕の間の電灯も点灯しますので
より一層ヴェネツィア的な不思議な雰囲気が出せそうな気がしているのです。


------------- Ichiro Futatsugi.■


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